亜鉛って何?透析患者の約半数が不足していると知って正直に調べた話
こんにちは、透析生活!のアグーと申します。
リン・カリウム・カルシウム・マグネシウムと、透析患者に関わるミネラルを順番に調べてきました。今回はミネラルシリーズの第5弾、「亜鉛」です。調べ始めてすぐ、これまでの4つと決定的に違う点に気づきました。今までは「溜まりすぎ」が問題でしたが、亜鉛は「足りなくなる」のが問題なのです。しかも、透析患者の約半数が不足しているというデータまでありました。
亜鉛って何?
亜鉛は、体の中の何百という酵素の働きを支えている必須ミネラルです。味を感じる細胞、皮膚や粘膜の修復、免疫、たんぱく質の合成——どれにも亜鉛が関わっています。体の中で作ることができないので、毎日の食事から摂り続けるしかありません。
透析患者の約半数が不足している
製薬会社ノーベルファーマの低亜鉛血症の解説ページに、透析患者123名を調べたところ62名(50.4%)が亜鉛不足の状態だったという検討結果が紹介されていました。約半数です。腎機能が悪い人ほど血清亜鉛の値が低い傾向があることも報告されています。
正直、リンやカリウムほど話題にならないミネラルなのに、この割合には驚きました。しかも血清亜鉛は、毎月の採血で必ず測る項目ではありません。「不足していても気づかれにくいミネラル」と言えそうです。
なぜ透析患者は亜鉛が足りなくなるのか
調べてみると、透析患者ならではの理由が重なっていました。
- 食事制限の影響:亜鉛は肉・魚介・レバーなどたんぱく質系の食品に多い。透析の食事管理でこれらを控えめにすると、亜鉛の摂取量も一緒に減ってしまう
- リン吸着薬の影響:食事と一緒に飲むリン吸着薬が、腸の中で亜鉛まで吸着して、吸収を邪魔することがある
- 吸収力の低下:腎臓が悪くなると、そもそも腸からの亜鉛の吸収が落ちると報告されている
リンの記事で「リン吸着薬は透析患者の相棒」と書きましたが、その相棒が亜鉛不足の一因にもなり得るとは。体の中のつながりは本当に複雑です。
亜鉛が足りないとどうなる?
亜鉛不足の症状として、こんなものが挙げられています。
- 味覚障害:味が薄く感じる、何を食べてもおいしくない
- 食欲低下
- 皮膚炎・湿疹・脱毛
- 傷の治りが遅い
- 免疫の低下:感染症にかかりやすくなる
- 貧血:血清亜鉛の値とヘモグロビンには正の相関があり、貧血の注射(ESA)が効きにくい一因になる可能性も指摘されている
気になったのは、どれも「透析のせいかな」「年のせいかな」で流してしまいそうな症状ばかりだということです。とくに味覚障害は、食事制限で薄味に慣れているせいだと思い込んでいたら実は亜鉛不足だった、ということが起こり得ます。貧血の記事で書いたESA(赤血球を作らせる注射)との関係も意外でした。注射を増やす前に、亜鉛を見るという視点があるそうです。
食事で摂るときの考え方
亜鉛が多い食品は、牡蠣・牛肉(赤身)・レバー・うなぎ・魚介類・卵・チーズ・豆類・ナッツなど。見てのとおり、たんぱく質の多い食品と重なります。ここが悩ましいところで、透析患者のたんぱく質は「たくさん摂っていい」わけではありません。日本透析医学会の基準では、血液透析のたんぱく質は1日あたり体重1kgあたり0.9〜1.2g程度が目安とされていて、ちゃんと上限があります。そしてその上限が設けられている理由が、まさにリンなのです。たんぱく質を摂るほどリンも増えるからです。
だから亜鉛のために肉や魚をどんどん食べる、というのは違います。決められたたんぱく質の“枠”の中で、亜鉛が多いものを選ぶ——これが現実的な考え方でした。調べていて「なるほど」と思ったポイントを挙げます。
- 牡蠣・赤身肉は亜鉛が多い:とくに牡蠣は食品の中でもトップクラス。同じたんぱく質を食べるなら、亜鉛の多いものを意識して選ぶ
- 減らしすぎもダメ:リンを恐れてたんぱく質そのものを減らしすぎると、低栄養になって筋肉が落ち、亜鉛も足りなくなる。摂りすぎも減らしすぎもダメで、目安量を守るのが大事
- 本当に避けたいのは加工食品:ハム・練り物・インスタント食品などに使われる添加物のリン(無機リン)は吸収率が90%以上ととても高い。同じリンでも、自然な食品より加工食品の“隠れリン”の方が要注意
- ナッツ・豆類はカリウムにも注意:亜鉛は摂れるが、カリウムも多め。量はほどほどに
つまり、たんぱく質もリンもカリウムも制限がある中で亜鉛を摂るのは、正直かなり難しいのが本音です。だからこそ「食事だけで頑張る」より、足りないと分かったら薬で補うという次の選択肢が大事になります。具体的にどれくらい食べていいかは人それぞれなので、必ず管理栄養士に相談してください。
保険がきく「亜鉛の薬」がある
そのかわり、と言うべきか、低亜鉛血症には保険適用の飲み薬があります。
- ノベルジン(酢酸亜鉛):もともとウィルソン病の薬で、2017年に低亜鉛血症にも使えるようになった
- ジンタス(ヒスチジン亜鉛):2024年8月に発売された新しい薬。1日1回で胃の不快感などが少ないとされる
血清亜鉛の値(目安として80μg/dL未満)などをもとに医師が判断して処方するもので、効果はゆっくり。血清亜鉛の改善は4〜8週間ほど、味覚の改善は3〜6ヶ月が目安とされています。じっくり付き合う治療です。
注意:自己判断のサプリはダメ
「足りないなら市販の亜鉛サプリを飲めばいい」と思いそうになりますが、ここに落とし穴があります。亜鉛を摂りすぎると、今度は銅の吸収が邪魔されて銅欠乏になり、それが原因の貧血などを起こすことがあるのです。薬として亜鉛を処方されている人も、定期的に亜鉛と銅の両方を検査しながら続けるのが基本だそうです。
ミネラルシリーズで毎回同じ結論になりますが、亜鉛も「多すぎても少なすぎてもダメ」。自己判断ではなく、数字を見ながら医師と調整するミネラルでした。
まとめ
- 亜鉛は味覚・皮膚・免疫・血液に関わる必須ミネラル
- これまでの4つと違い、透析患者は「不足」が問題。約半数が亜鉛不足というデータも
- 原因は食事制限+リン吸着薬+吸収低下の重なり
- 味覚がおかしい・傷が治りにくい・貧血が治りにくい——心当たりがあれば血清亜鉛を測ってもらう価値あり
- ただし食事は難しい。たんぱく質にも目安量(0.9〜1.2g/kg/日)があり、その枠の中で亜鉛の多いもの(牡蠣・赤身肉など)を選ぶ。足りなければ薬で補う
- 保険適用の亜鉛製剤がある。ただし補充中は銅欠乏に注意が必要で、市販サプリの自己判断はNG
ミネラルシリーズ5つ目にして、初めて「溜まる」ではなく「足りない」が主役のミネラルでした。毎月の採血項目に入っていないからこそ、症状に心当たりがあったら自分から主治医に聞いてみる。それがこの記事の結論です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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