土用の丑の日、透析患者はうなぎを食べていい?「悪い例ですね」と言われた私が正直に調べた話
こんにちは、透析生活!のアグーと申します。
スーパーに、うなぎのかば焼きが並ぶ季節になりました。2026年の土用の丑の日は7月26日(日)。今年は「二の丑」がない年なので、チャンスは一度きりだそうです。
香ばしいタレの匂い。「土用の丑の日」ののぼり。おいしそうだなと思う一方で、私にはうなぎについて、忘れられない思い出があります。
「悪い例ですね」――うなぎが怖くなった日
透析になる前、糖尿病の専門病院に「透析と糖尿病の勉強」のために2週間入院したことがあります。そのときに、「透析とはどういうものか」を学ぶビデオを見せてもらいました。
その中で、ある透析患者さんが自分の生活を紹介していました。「うなぎが大好きで、透析の前に食べるようにしているんです」と。
なるほど、透析で抜けるから前に食べるのか。工夫してるんだなあ――正直、そのときの私はそう思いました。
ビデオが終わって、看護師さんに感想を聞かれたので、その患者さんの話をしました。返ってきたのは、一言。
「悪い例ですね」
……え、悪い例なんだ。
以来、私の中でうなぎは「透析患者が控えないといけない食材」の代表になりました。
――のはずなのに。正直に白状すると、私は毎年夏になると、結局うなぎを食べています。一昨年は関東の有名店で。去年は地元のうどん屋さんで、透析終わりの晩ごはんに、うなぎの定食を。「悪い例ですね」の一言が頭をよぎりながらも、箸が止まらないのです。
だったら、後ろめたさを抱えたまま食べ続けるより、ちゃんと調べたほうがいい。コーヒー(第93記事)、お酒(第95記事)、おやつ(第100記事)と調べてきたシリーズ、今回は因縁の「うなぎ」です。土用の丑の日を前に、正直に調べました。
結論:食べていい。ただし「量」と「タレ」に条件つき
最初に結論を書いてしまいます。
透析患者でも、うなぎは食べていい。ただし、目安は「1/3本程度」。そして「追いダレはしない」。
「悪い例」の記憶と、毎年食べてしまう現実のあいだで揺れていた身からすると、「条件つきで堂々と食べていい」は、ありがたい答えでした。理由を順番に説明していきます。
うなぎは、実は「悪者」ではない
まず意外だったのは、うなぎそのものは栄養的に優秀な食品だということです。
うなぎには、良質なたんぱく質のほか、ビタミンA、ビタミンB1・B2、ビタミンDなどが豊富に含まれています。夏バテ予防にうなぎと言われるのは、それなりに理由があるわけです。
透析患者は「たんぱく質をしっかり摂る」ことも大事なので(第81記事で書きました)、その意味ではうなぎは味方になり得る食品です。
じゃあ何が問題なのか。いつもの2つです。リンと塩分。
問題①:リンが多い。100gで300mg
食品成分表によると、うなぎのかば焼き100gに含まれるリンは約300mg。白焼きでも約280mgです。
透析患者の1日のリン摂取目安は、体格にもよりますが、おおむね700〜1,100mg程度とされています。
かば焼き100gは、だいたい2/3本〜1本分。つまり、うなぎを1本食べると、それだけで1日のリンの3〜4割を使ってしまう計算になります。ほかの食事にもリンは含まれているので、1本まるごとは正直厳しい。
そこで出てくるのが「1/3本程度におさめる」という目安です。1/3本なら、リンは100mg前後。これなら現実的です。
「透析の前に食べれば大丈夫」が悪い例だった理由
ここで、あのビデオの患者さんの話に戻ります。「透析の前に食べるようにしている」――一見、賢い工夫に思えますよね。
でも、看護師さんが「悪い例」と言った理由が、調べてみてわかりました。リンは、透析でも取り切れないのです(第66記事で書きました)。1回の透析で除去できるリンの量には限りがあって、食べた分がそのまま帳消しになるわけではありません。
「透析があるから大丈夫」と頼る食べ方は、抜け切らなかった分が体に積み上がっていく食べ方でもある。だから悪い例。数年越しに、あの一言の意味がようやく腑に落ちました。
問題②:タレの塩分。かば焼き100gで1.3g
もうひとつの問題が塩分です。かば焼きは、タレに漬けて焼くぶん塩分が高く、100gあたり約1.3g。
透析患者の塩分目安は1日6g未満(第70記事で書きました)。かば焼き1本で1g以上使うのは、なかなか大きい。
そして一番やってはいけないのが「追いダレ」です。うな丼にタレを追加でかけると、それだけで塩分がどんどん積み上がります。ついているタレだけで十分おいしいので、追加は我慢です。
カリウムは? 意外と「ほどほど」
「リンと塩分がダメなら、カリウムもダメなんでしょ」と思いきや、うなぎのカリウムは100gで約230mg。バナナ1本(可食部100gで約360mg)より少ないくらいで、食品の中では「多め」ではあるものの、極端に多いわけではありません。
1/3本程度に抑えれば、カリウムは80mg前後。ここはあまり神経質にならなくてよさそうです。
透析患者の「うなぎの食べ方」4つの工夫
調べてわかった工夫をまとめます。
- 量は1/3本程度に。家族と分け合うか、残りは翌日以降の楽しみに
- 追いダレはしない。ついているタレだけで
- 白焼きを選ぶ手も。タレがないぶん塩分を抑えられ、わさびを少しつければ十分おいしい
- 市販のかば焼きは、タレを水でさっと洗い流してから、ほうじ茶や麦茶で煮る、またはグリルで焼き直すと塩分を減らせる(玉露はカリウムが多いのでNG)
タレを洗い流すなんてもったいない気もしますが、「焼き直すとふっくらして、むしろおいしくなる」そうです。これはちょっと試してみたい。
あと、肝吸いをつける場合は、汁物なので水分と塩分がかさみます。飲むなら数口にとどめるのが無難です。
「控える」と「工夫して楽しむ」は違う
正直、調べる前の私は、「悪い例ですね」の一言を思い出しては、それでも毎年食べて、少し後ろめたくなる——そんな付き合い方をしていました。
でも実際は、悪い例だったのは「透析をあてにして好きなだけ食べる」ことであって、うなぎそのものではありませんでした。量とタレに気をつければ、年に一度の土用の丑の日、堂々と味わっていい。
ダメだと思い込んで我慢するのと、仕組みを知った上で1/3本を大事に食べるのとでは、気持ちがまったく違います。
まとめ
- 2026年の土用の丑の日は7月26日(日)。二の丑はなし
- うなぎ自体は良質なたんぱく質とビタミンが豊富な優秀食品
- 問題はリン(かば焼き100gで約300mg)と塩分(同約1.3g)
- 「透析前に食べれば大丈夫」は悪い例。リンは透析でも取り切れない
- 目安は1/3本程度。追いダレはしない
- 白焼き+わさび少量、タレを洗ってグリルで焼き直すなどの工夫も
- 肝吸いは水分と塩分に注意。飲むなら数口
そして今年。引っ越してきたいまの街は川が多く、歩いているとうなぎ屋さんをよく見かけます。今年の土用の丑の日は、この街で。量とタレに気をつけながら、堂々と味わうつもりです。
土用の丑の日、みなさんも工夫しながら、季節の味を楽しんでください。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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