第117記事

ご飯がおいしくない…透析患者の「味がしない」は亜鉛だけじゃなかった。4つの原因を正直に調べた話

こんにちは、透析生活!のアグーと申します。

「なんだか、ご飯がおいしくない」
「味が薄い気がして、つい濃い味をほしくなる」

透析をしていると、こういう感覚に心当たりのある方もいるのではないでしょうか。

正直に言うと、私自身は今のところ味覚がおかしいと感じたことはありません。もともと薄味が好きなので、透析の食事制限で「味が物足りない」と苦労した記憶もないのです。そこは運がよかったのかもしれません。

ただ、透析患者には味覚の異常が多いと知って、少し気になりました。今ないからといって、この先もないとは限らないからです。調べてみると、透析患者の「味がしない」には、きちんとした理由がいくつもありました。しかも以前に書いた亜鉛の記事(第104記事)で触れた亜鉛不足は、そのうちのひとつでしかなかったのです。今回は「味覚の変化」そのものを主役にして、正直に調べてみます。

「味がしない」は、気のせいではない

まず知っておきたいのは、味覚の異常は透析患者に高い頻度で見られると報告されている、ということです。「自分の気のせい」「年のせい」ではなく、体に起きている変化として説明がつくものだったのです。

味を感じているのは、舌などにある「味蕾(みらい)」という小さなセンサーです。この味蕾の細胞は新陳代謝がとても速く、短い周期で新しく生まれ変わり続けています。つまり味覚は、常に作り直され続けている感覚なのです。

裏を返すと、この「作り直し」がうまくいかなくなったとき、味覚は落ちます。そしてその作り直しを邪魔する要因が、透析生活には重なりやすいのでした。

原因① 亜鉛が足りない

味蕾の細胞が新しく生まれ変わるには、亜鉛が必要とされています。だから亜鉛が不足すると、味蕾の入れ替えが追いつかず、味を感じにくくなります。

そして透析患者は、その亜鉛が不足しやすい。第104記事で調べたとおりです。理由は重なっていました。

厄介なのは、血清亜鉛が毎月の採血で必ず測る項目ではないことです。足りていても足りていなくても、気づかれにくい。「味がおかしい」と感じたときに、自分から主治医に聞いてみる価値があるのはそのためです。

原因② 飲んでいる薬の影響

ここからが、今回いちばん「知らなかった」と思ったところです。

味覚障害の原因として、薬の副作用は代表的なもののひとつとして挙げられています。厚生労働省が「薬物性味覚障害」という名前で対応マニュアルを出しているほどで、けっして珍しい話ではありません。血圧の薬、睡眠薬、抗不安薬など、報告されている薬の種類は幅広いようです。

透析をしていると、飲んでいる薬の数はどうしても多くなります。リン吸着薬、血圧の薬、貧血の薬、かゆみの薬……。その中に味覚に影響するものが混ざっていても、自分では気づきようがありません。

ただし——ここは強調しておきたいのですが——「この薬のせいかも」と思っても、自己判断でやめるのは絶対にダメです。透析患者の薬は、どれも理由があって出ています。気になったら、やめる前に主治医か薬剤師に相談する。これが唯一の正解だと思います。

原因③ 口が渇いている

味は、唾液に溶けてはじめて味蕾に届きます。だから口の中が乾いていると、そもそも味が伝わりにくくなる。唾液が減ることで味を感じにくくなるというのは、味覚障害の原因としてよく挙げられているものです。

そしてここが、透析患者にとって他人事ではありません。私たちは水分制限をしています。第73記事に「水が飲みたい」と書いたとおりで、口の渇きは透析生活につきものの感覚です。

もちろん「水分制限があるから口が渇き、だから味覚が落ちる」と単純につなげてしまうのは乱暴です。原因は人によって違います。ただ、口の渇きが味覚に影響しうるという事実は知っておいて損はないと思いました。うがいや口腔ケアで口の中を清潔に保つことが、味覚の面でも意味を持つかもしれない、ということです。

原因④ 加齢・嗅覚・持病

そのほかにも、原因として挙げられているものがあります。

糖尿病から透析に入った私にとって、ここは無視できないところでした。原因はひとつに決まらず、いくつも重なって起きると考えられている——これが調べていて分かった実像です。

「味がしない」にも種類がある

もうひとつ意外だったのが、味覚障害はひとくくりではないということです。挙げられている型には、こんなものがありました。

「味がしない」と一言で言っても中身が違う。もし受診するなら、自分がどのタイプなのかを伝えられると、話が早いはずです。

放っておくと、低栄養につながる

味覚の変化を「まあ、そのうち慣れる」で済ませたくない理由があります。おいしくないと、食べる量が減るからです。

透析患者にとって、食べられなくなることは軽い話ではありません。第109記事で夏の低栄養について書いたとおり、食が細ることは筋肉が落ち、体力が落ちることに直結します。味覚の変化は、その入り口になり得ます。

もうひとつの心配は逆方向で、味を感じにくいぶん、つい味を濃くしてしまうことです。塩分が増えれば喉が渇き、水を飲み、体重が増える——第70記事の塩分の話や、第94記事のむくみの話とつながってきます。味覚の問題は、食事管理全体に静かに効いてくるのです。

じゃあ、どうすればいいのか

調べた結果、私なりに整理した「できること」はこうなりました。

正直に言うと、「これをすれば治る」という気持ちのいい答えは見つかりませんでした。でも、「気のせいじゃなかった」「相談していい話だった」と分かっただけでも、調べた価値はあったと思っています。

この記事は透析患者本人が調べてまとめた内容であり、医療アドバイスではありません。味覚の変化の原因は人によって異なり、複数が重なって起こるとされています。薬・検査値・サプリ・食事に関することは、必ず担当医・透析施設・薬剤師・管理栄養士にご確認ください。とくに、思い当たる薬があっても自己判断で中止しないでください。

まとめ

食事は、透析生活の中で数少ない楽しみのひとつです。私はもともと薄味なぶん、いまのところその楽しみを失わずにいます。でも、もし薄くなってきたと感じている方がいたら、それは我慢する話ではなく、相談していい話でした。みなさんは、味の感じ方が変わったと思ったことはありますか?

最後まで読んでいただきありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう。

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