ご飯がおいしくない…透析患者の「味がしない」は亜鉛だけじゃなかった。4つの原因を正直に調べた話
こんにちは、透析生活!のアグーと申します。
「なんだか、ご飯がおいしくない」
「味が薄い気がして、つい濃い味をほしくなる」
透析をしていると、こういう感覚に心当たりのある方もいるのではないでしょうか。
正直に言うと、私自身は今のところ味覚がおかしいと感じたことはありません。もともと薄味が好きなので、透析の食事制限で「味が物足りない」と苦労した記憶もないのです。そこは運がよかったのかもしれません。
ただ、透析患者には味覚の異常が多いと知って、少し気になりました。今ないからといって、この先もないとは限らないからです。調べてみると、透析患者の「味がしない」には、きちんとした理由がいくつもありました。しかも以前に書いた亜鉛の記事(第104記事)で触れた亜鉛不足は、そのうちのひとつでしかなかったのです。今回は「味覚の変化」そのものを主役にして、正直に調べてみます。
「味がしない」は、気のせいではない
まず知っておきたいのは、味覚の異常は透析患者に高い頻度で見られると報告されている、ということです。「自分の気のせい」「年のせい」ではなく、体に起きている変化として説明がつくものだったのです。
味を感じているのは、舌などにある「味蕾(みらい)」という小さなセンサーです。この味蕾の細胞は新陳代謝がとても速く、短い周期で新しく生まれ変わり続けています。つまり味覚は、常に作り直され続けている感覚なのです。
裏を返すと、この「作り直し」がうまくいかなくなったとき、味覚は落ちます。そしてその作り直しを邪魔する要因が、透析生活には重なりやすいのでした。
原因① 亜鉛が足りない
味蕾の細胞が新しく生まれ変わるには、亜鉛が必要とされています。だから亜鉛が不足すると、味蕾の入れ替えが追いつかず、味を感じにくくなります。
そして透析患者は、その亜鉛が不足しやすい。第104記事で調べたとおりです。理由は重なっていました。
- 食事制限の影響:亜鉛は肉・魚介・レバーなど、たんぱく質の多い食品に含まれる。透析の食事管理でこれらを控えめにすると、亜鉛も一緒に減る
- リン吸着薬の影響:食事と一緒に飲むリン吸着薬が、腸の中で亜鉛まで吸着して吸収を邪魔することがある
- 吸収力の低下:腎機能が落ちると、腸からの亜鉛の吸収そのものが落ちると報告されている
厄介なのは、血清亜鉛が毎月の採血で必ず測る項目ではないことです。足りていても足りていなくても、気づかれにくい。「味がおかしい」と感じたときに、自分から主治医に聞いてみる価値があるのはそのためです。
原因② 飲んでいる薬の影響
ここからが、今回いちばん「知らなかった」と思ったところです。
味覚障害の原因として、薬の副作用は代表的なもののひとつとして挙げられています。厚生労働省が「薬物性味覚障害」という名前で対応マニュアルを出しているほどで、けっして珍しい話ではありません。血圧の薬、睡眠薬、抗不安薬など、報告されている薬の種類は幅広いようです。
透析をしていると、飲んでいる薬の数はどうしても多くなります。リン吸着薬、血圧の薬、貧血の薬、かゆみの薬……。その中に味覚に影響するものが混ざっていても、自分では気づきようがありません。
ただし——ここは強調しておきたいのですが——「この薬のせいかも」と思っても、自己判断でやめるのは絶対にダメです。透析患者の薬は、どれも理由があって出ています。気になったら、やめる前に主治医か薬剤師に相談する。これが唯一の正解だと思います。
原因③ 口が渇いている
味は、唾液に溶けてはじめて味蕾に届きます。だから口の中が乾いていると、そもそも味が伝わりにくくなる。唾液が減ることで味を感じにくくなるというのは、味覚障害の原因としてよく挙げられているものです。
そしてここが、透析患者にとって他人事ではありません。私たちは水分制限をしています。第73記事に「水が飲みたい」と書いたとおりで、口の渇きは透析生活につきものの感覚です。
もちろん「水分制限があるから口が渇き、だから味覚が落ちる」と単純につなげてしまうのは乱暴です。原因は人によって違います。ただ、口の渇きが味覚に影響しうるという事実は知っておいて損はないと思いました。うがいや口腔ケアで口の中を清潔に保つことが、味覚の面でも意味を持つかもしれない、ということです。
原因④ 加齢・嗅覚・持病
そのほかにも、原因として挙げられているものがあります。
- 加齢:年齢とともに味蕾の数そのものが減っていくとされる
- 嗅覚の衰え:においが分からないと「味がしない」と感じる。これは風味障害と呼ばれる。風邪や鼻の不調のあとに感じる「味がしない」も、実は嗅覚側のことが多い
- 全身疾患:糖尿病、肝臓の病気、腎臓の病気、胃腸の病気などが背景にあることも
糖尿病から透析に入った私にとって、ここは無視できないところでした。原因はひとつに決まらず、いくつも重なって起きると考えられている——これが調べていて分かった実像です。
「味がしない」にも種類がある
もうひとつ意外だったのが、味覚障害はひとくくりではないということです。挙げられている型には、こんなものがありました。
- 味が薄くなる、まったく分からなくなる(味覚減退・無味症)
- 何も食べていないのに口の中にずっと味が残る(自発性異常味覚)
- 本来の味と違う味に感じる(異味症)
- 甘い・しょっぱいなど、特定の味だけ分からない(解離性味覚障害)
- 舌の一部分だけ味を感じない(部分的味覚障害)
「味がしない」と一言で言っても中身が違う。もし受診するなら、自分がどのタイプなのかを伝えられると、話が早いはずです。
放っておくと、低栄養につながる
味覚の変化を「まあ、そのうち慣れる」で済ませたくない理由があります。おいしくないと、食べる量が減るからです。
透析患者にとって、食べられなくなることは軽い話ではありません。第109記事で夏の低栄養について書いたとおり、食が細ることは筋肉が落ち、体力が落ちることに直結します。味覚の変化は、その入り口になり得ます。
もうひとつの心配は逆方向で、味を感じにくいぶん、つい味を濃くしてしまうことです。塩分が増えれば喉が渇き、水を飲み、体重が増える——第70記事の塩分の話や、第94記事のむくみの話とつながってきます。味覚の問題は、食事管理全体に静かに効いてくるのです。
じゃあ、どうすればいいのか
調べた結果、私なりに整理した「できること」はこうなりました。
- まず主治医に言ってみる:「最近、味が分かりにくい」と口に出すだけで、血清亜鉛を測ってもらえるかもしれないし、薬の見直しにつながるかもしれない
- 自己判断で市販の亜鉛サプリを飲まない:亜鉛を摂りすぎると銅の吸収が邪魔され、銅欠乏を招くことがある。亜鉛の薬は保険適用のものが病院で処方されるもので、医師が数字を見ながら調整する
- 自己判断で薬をやめない:思い当たる薬があっても、必ず相談してから
- 口の中を清潔に保つ:うがい、歯みがき、口腔ケア。第36記事で書いた歯の話ともつながる
- 治るとしても、ゆっくり:亜鉛不足が原因の場合でも、味覚の改善には数ヶ月単位かかるとされる。すぐ効かないからと諦めない
正直に言うと、「これをすれば治る」という気持ちのいい答えは見つかりませんでした。でも、「気のせいじゃなかった」「相談していい話だった」と分かっただけでも、調べた価値はあったと思っています。
まとめ
- 透析患者の味覚の異常は高頻度に報告されている。「気のせい」でも「年のせい」でもない
- 味を感じる味蕾の細胞は速い周期で生まれ変わっており、その入れ替えがうまくいかないと味覚が落ちる
- 原因①亜鉛不足(食事制限+リン吸着薬+吸収低下。詳しくは第104記事)
- 原因②薬の副作用。厚労省がマニュアルを出すほど知られた原因。ただし自己判断で中止は厳禁
- 原因③口の渇き。味は唾液に溶けて届くため、乾いていると感じにくい
- 原因④加齢・嗅覚の衰え・糖尿病などの持病。原因はひとつに決まらず重なることが多い
- 「味がしない」にも型がある(無味症・異味症・自発性異常味覚など)。伝えられると受診が早い
- 放置は低栄養と濃い味(塩分増)の両方につながる。まず主治医に「味が分かりにくい」と言ってみる
食事は、透析生活の中で数少ない楽しみのひとつです。私はもともと薄味なぶん、いまのところその楽しみを失わずにいます。でも、もし薄くなってきたと感じている方がいたら、それは我慢する話ではなく、相談していい話でした。みなさんは、味の感じ方が変わったと思ったことはありますか?
最後まで読んでいただきありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう。
📝 noteでも透析生活の情報を発信中
noteをフォローする →